楽天koboで自作EPUBを読む&感想

 発売日の遅くに、予約していた楽天 kobo touchが届き、さっそく自作EPUBでもって表示具合を確かめてみました。

 購入者がかなり多かったようで、サーバーが混雑してセットアップに苦労しましたが何とか始動。ネットではこのセットアップの混乱とマニュアルがないことでブーイングの嵐ですが、まあ、それは機械自体の評価というよりも、その周辺の現象ですから、楽天さんのスタートアップ体制の甘さへの批判は当然としても、もう少し冷静に機能を見極める必要があるのではないかと思います。

 で、私の場合は自慢ではないですが、たまたま半年前に海外版を手に入れていましたので、マニュアルがなくても何とかなります。メニュー類の構成はほぼ海外版と同じなので、まるで隠されたようにメニューの奥深くにある「ブラウザを起動」ボタンにたどり着き、そこから書籍ファイルを置いているDropboxにアクセスします(もちろんその前にwifi設定が必要)。手順はこう。
ホーム画面左上の歯車アイコン → 設定ボタン → その他 → ブラウザを起動

 ブラウザを起動したら(ブラウザは万事動作がのろいことを覚悟しておいて下さい)、Googleの検索画面が表示されますので、Dropboxを検索。ログイン画面からDropbox に入ります。入ったDropboxはモバイル用のもので、そのままではファイルのダウンロードができませんので、画面最下部左下の「Dropboxバージョン」という文字をタップしてパソコン用画面へ移動します。そして、目的のフォルダへ入り、ファイルをタップすれば上にダウンロードのボタンが現れますので、タップしてダウンロード。すると目的の書籍ファイルがホーム画面に現れるはずです。ブラウザはタップに対する反応も鈍く、何度もタップする必要がありますが、しつこくやっていれば何とかダウンロードまでたどり着けるはずです。

 まあ最初は、パソコンとUSBで接続して、エクスプローラーで kobo を開き、書籍ファイルをコピーする方が簡単なのですが、制作途中で何度も確認したい場合などはそれも手間。Dropboxのフォルダをお気に入りかホーム画面に設定しておけば、以後はブラウザを開けばすぐに書籍フォルダを表示することができます。

 さて、こうして自作EPUBを koboに登録してさっそく読んでみます。ところがあまり芳しくありません。フォントのリュウミン(KL-R Pr6)はなかなかきれいですが、句読点が変に開いているし、ページ毎に表示される行数が違ってページの左側に大きな空きができたりしています。それにページ送りが横書きのように左開きのままです。そして、ソニーReaderではフリーズしてしまう例の「世話編」の問題個所で同じように固まります。これでは使えません。

 大いに落胆して人様の使用記を探っていると、こんな記述に出くわしました。
「ファイル名を ~.epub から ~.kepub.epub に変更するだけで、問題は全部解決してしまう」
 確かにパソコンから見た kobo内のデフォルトの書籍ファイルには、.kepub.epubという変な拡張子がついていて何だろうと思ったのですが、この.kepubでEPUB3ファイルを区別していたようです。これまでEPUB2リーダーとして世界的な実績を持つ koboだけに、その機能を犠牲にせずにEPUB3に対応するためには、エンジンを別にするしかなかった、その区別をファイル名ですることにした、ということでしょうか。

 それはともかく、さっそく .kepubをファイル名に加えて読み直します。今度は大丈夫です。ページ送りの具合も紙面の様子も先行のリーダーに何の遜色もありません。「世話編」のフリーズも解消しました。それどころか、よく見ると文字組みがかなりしっかりしているようです。ずっと見ていっても、ソニーReaderや Kinoppy、bREADERDで必ず幾つか発生していた行頭行末禁則の破綻がまったく見つかりません。くの字点の泣き別れもありません。それでいて行端はよく揃っています。そして、ルビの扱いもソニーReaderと同じ中付きですが、3文字のルビでも文字かけ処理をして親字の字間はベタ送りを維持しています。4字ルビで少し字間が広がりますが、ソニーReaderのように3字以上は字間を開いてしまい、文字の流れが間延びするという感じはありません。上出来です。
(→ルビに関する追記 正確には、「文字かけ処理は他の漢字にはかけない」という原則をきっちり守っているようで、漢字に隣る場合は3字ルビでも漢字側にはやや字間が開きます。けど、ひらがなにはしっかり文字かけして、4字ルビでも字間の開きは最小限に押さえています。電書でここまでできたら御の字では?)

 ついに我々はEPUB3を確実に受けとめてくれる専用端末を手に入れました。って、ソニーReaderがEPUB3に対応した時にも同じようなことを書いたような気がするのですが、その後いろいろと綻びが見えてきてReaderには味噌がついてしまいました。その点 koboは大丈夫でしょう。ソニーReaderやKinoppyに数々の難題をふっかけて困らせてきた鏡花EPUBがこれだけ端正に表示されているのですから。ただし、幾つかさらに高望みをしたい点が見つからなくはありません。

 まずこれは最大の高望みでしょうが、IVSへの対応です。bREADERがまさかのIVS対応で異体字の表示を実現してくれた今は、必ずしも無理な願いではないような気がしてきました。現状、koboで異体字セレクター付きのEPUBを読むと、Kinoppyのようにすべて文字化けするというわけではないものの、熟語の場合、一方の文字が消えてしまうという現象がいくつか見られます。ソニーReaderのように完全無視して基本字を表示するというなら、異体字セレクター付きEPUBとの共存は可能ですが、上のような現象があるとそれも難しくなります。また koboはサロゲートペアのユニコード文字にも対応していないようです。これも空白になってしまいます。ソニーReaderは対応しています。さらに外字を画像で表示した場合、画像はかなり右寄りに表示されてしまいます。ルビも右に寄って親字と重ならないのが救いですが、これは早めに修正してもらえたらと思います。これもソニーReaderは問題ありません。

 つまり外字・異体字関係の使い勝手はソニーReaderの方が少し上。けど、文字組みと表示の安定性では koboが遥かに勝っています。パソコンからフォントファイルをコピーすることで、多様なフォントを使用することもできます(ただし海外版にある行送りと余白、行揃えの設定機能は、日本版では無効にされているようです)。ようやく信頼できるEPUB3端末を得て、これからは koboを基準にEPUB作りを進めてみたいと考えています。次に来るソニーReaderの新型とKindle日本版にとっても koboのハードルはけっこう高いのではないでしょうか。

→追記 EPUB自主出版の受け皿としてkoboを考える場合、大きな問題があることがわかってきました。本来汎用をめざすEPUBのファイル名にkobo用の「.kepub」をつけなければならないという矛盾は、kobo用ファイルを別に用意することで一応回避できるとしても、なんとこの本にはkobo上ではどこまで読んだかが残らない、という電子本としてほとんど致命的な欠陥が生じてしまうようです。楽天のブックストアからダウンロードした本でない場合、読書記録やメモも残らないというのが、今のところのkobo上での個人制作本の扱いのようです。具体的には読んでいるxhtmlファイルの先頭に毎回戻ってしまいますので、まあ短編集などの場合は何とか耐えられるとしても、長編では悲惨でしょう。毎回記憶を頼りに読んだ個所をただでさえ快適とはいい難いページナビゲーションの中で探さなくちゃならないのですから。この点が解決されない限り「文字組みがきれいですから、ぜひkoboで読んでください」とはいいにくくなってしまいましたね。

9 comments »

  1. Biokovo said,
    1月 14, 2013 @ 12:25 AM

    お役に立ちましたなら、何よりです。端末にファイルを送るのは、やはりDropbox経由が便利ですね。

  2. ののの said,
    1月 13, 2013 @ 7:54 PM

    丁寧な解説、ありがとうございました。
    ブラウザを使用したDropbox経由で自作kepubファイルをダウンロードできました。ちなみに、現在は左下の「Dropboxバージョン」の代わりに「デスクトップ」と出るようです。同じ位置に出るのでわかりました。

  3. Biokovo said,
    7月 24, 2012 @ 9:42 AM

    koboは.kepubをつけないとEPUB2として読んでいるはずです。逆に言うと自作本では.kpubをつけないと、epub3として認識してくれないというちょっと困った仕様になっているようですね。他のリーダーには悪影響はなさそうですが。
    >Sigilで EPUB3 にする方法
    これはいいマニュアル本があります。「EPUB3標準マニュアル」(インプレスジャパン)。FUSEeβ の解説も載っています。

  4. 池谷 said,
    7月 24, 2012 @ 8:37 AM

    Sigilで EPUB3 にする方法
    または KOBOで EPUB2 を読む方法を
    教えていただけませんか

  5. Biokovo said,
    7月 23, 2012 @ 10:28 PM

    うまくいって何よりでした。
    SigilはEPUB2にしか対応していませんので、EPUB3を利用するには色々手を加える必要がありますね。
    FUSEeβというオーサリングソフトがEPUB3に対応していますが、私は惰性でSigilを使い続けていて、まだ本格的に使ったことはありません。試してみられたらと思います。

  6. 池谷 said,
    7月 23, 2012 @ 7:52 PM

    ありがとう ございました ・・・ たすかりました
    Biokovoさん の おっしゃったとおりで OK でした
    microSDは とくに 必要ありませんでした
    KOBO の ROOTに COPYでOK
    わたしの場合は *.epb のままで ちゃんと あらわれました
    *.pdfも OK
    Sigilで作った (HTML から変換) *.epub が ダメでした
    dotEPUB で つくった *.epub は OK
    だけど dotEPUB は 大きなファイルは ダメなんです
    なにが いいんでしょうか?

  7. Biokovo said,
    7月 23, 2012 @ 10:22 AM

    ええっと、コンピュータとUSBでつないだ場合は、マイコンピュータにkoboが現れますので、開いてルートディレクトリにepubファイルをコピーします。既存のepubファイルがたくさん並んでいると思いますので、そこにコピーします。
    マイクロSDを使う場合は、私のkoboではファイル名に.kepubをつけないと読んでくれないようです。.kepubをつけるとそのまま正常に表示されています。
    文字が白四角になる場合はたぶんフォントの設定が必要です。ページの中央をタップして下のフォント設定から設定画面に入り、フォント覧をモリサワリュウミンにしてください。USB接続の時、ルートディレクトリにfontsフォルダを作って、そこにフォントファイルをコピーしておけば、そのフォントを選択することもできますよ。

  8. 池谷 said,
    7月 23, 2012 @ 7:10 AM

    すみません・・・追伸・・・というか??
    最初 KOBO 本体のどこかに ???.epub を COPY したら ライブライに表示されて 読んだら 日本語が すべて 四角
    これを 削除して 別のを COPY したら ・・・ ライブラリに 現れない
    ネットで MicroSD の 中のものしか 認識しない というのが あったので
    MicroSDに ???.pdf を copyしたら OK
    MicroSDに ???.kepub.epub を COPYしたら 前述のように なって ハテナ です

  9. 池谷 said,
    7月 23, 2012 @ 7:01 AM

    教えてください
    KOBO で epub を読む ・・・ に挑戦してるんですが
    まづ Sigil でつくった ???.epub を KOBO に copy しても 表示されない
    ???.kepub.epub にすると 表示されるけど ”読書中” の 白紙のページのみ
    KOBO の ディレクトリの どこに COPY すればいいのでしょうか?
    いろいろ 試したんですが 結果が 混乱状態

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