『航薇日記』追懐行2〈瑜伽山と田の口港〉

「山の最も高き所に瑜伽権現の祠あり。祠宇荘麗にて楼門亦また巍々たり。其の祭る所を問へば、本体は阿弥陀仏なるよし。」(『航薇日記』11月4日)

「楼間より望めば一道の街衢漸々に低く、左右の酒楼熱閙驚くべし。西屋といへる家に憩ふ。酒美に魚鮮なり。…かかる山中にこの繁華境あるは誠に意表といふべし。」(同)

「一里許り行きて、田の口の藤屋五郎左衛門の家にいたる比は日も暮れはてぬ。海浜より遥かに望めば、四国の山々目睫にあり。象頭山・飯野山…、其他島嶼数しれず、奇景寔に驚くべし。」(同)

「此田の口の港は金比羅へ渡る繁華の地なるに、人家みな粗悪にて魚も乏しく、酒は馬溺色にして口に入りがたし。」(同11月5日)

2 comments »

  1. 晩霞舎 said,
    1月 19, 2022 @ 7:15 PM

    私も最初は馬が溺れるって?と思ったのですが、漢和辞典を引いてみると溺には「いばり」の意味もあるようですね。その場合は読みもバニョウショクとなるようです。それにしても馬の小便色の酒とはどんな味だったんでしょう。

  2. 村松茂 said,
    1月 19, 2022 @ 3:53 PM

    『航薇日記』中の「馬溺色」を調べていて、貴ページに至りました。いまさらながら読めない、書けない、意味の分からない漢字の多さに愕然としています。教養度が……。

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