「成島柳北 朝野新聞雑録集」明治11年編下詳細
西南戦争後の混乱する社会を見つめた柳北コラム第2冊
[成島柳北 朝野新聞雑録集 ―明治11年編下 ]
本書には、昨年刊行した「明治11年編上」に続き、明治11年7月から12月の間「朝野新聞」に掲載された「雑録」95編を収録しました。上下巻併せて明治11年編に収録した「雑録」は189編にのぼり、ほぼ二日に一編のハイペースで柳北はこのコラムを書き続けていたことになります。「朝野新聞」創刊以来5年、たゆまず揮い続けてきたその筆に未だ疲弊やマンネリの影は感じられません。それはとりもなおさず明治社会の多難な船出に対する柳北の思いの強さを示していると言えるでしょう。前年の西南戦争の余韻が残るこの年には、その戦費調達の影響でインフレーションが進行し、人々の生活に重くのしかかりました。そのことを柳北は「雑録」でたびたび取り上げて嘆きをともにしています。例えば年末に近く書かれた「困窮賦」には擬古的な漢文調に乗せて、インフレ下の生活の諸相がみごとに写し取られています。もちろんインフレーション以外にも、公選制度をめぐる混乱や食い詰め士族の問題、官権の横暴と人民の卑屈などなど、柳北が取り上げた題材は多様で、それぞれに縦横に筆を揮いつつ、一貫して社会の開明と制度の公平を求め続けているところに、最初期の社会批評家としての柳北のゆるがない姿勢を感じることができます。
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