新ソニーReader PRS-T2のEPUB3にがっかり

 以前書いたように、既存のソニーReader PRS-T1のEPUB3表示能力には、不完全なところがあります。特に、一段落が特別に長い文章を読ませた場合、ページ送りがフリーズといいたくなるほど遅延してしまうのは、稀なケースだとはいえ読書端末として致命的な欠陥だと思います。けれど、それも途中からのファームアップでEPUB3に対応したという制約があるためで、はなからEPUB3を意識して作られた新Readerにはゆめゆめそんなことはないはず。そんな確信をもって、ガジェットコレクターめいてきた机まわりに目をつむって注文した新Reader PRS-T2ですが、みごとに裏切られました。

 結論からいうと、PRS-T1のEPUB3における欠陥・難点はそっくりそのままPRS-T2に引き継がれています。というか、EPUBエンジン的には両者はイコールです。何の改良もリファインも加えられていないように見えます。だから、相変わらず『鏡花短編選世話編』の「假宅話」の半ば辺りでは、1ページめくるのに数分が費やされますし、『鏡花短編選深山編』の「銀短册」ではあるはずのない数行の空白行が出現します。また、相変わらず2文字取りの「くの字点」が行末行頭で泣き別れになります。そのほか、改行行頭の鍵括弧の天付き半角取りとか、リンク部分への強制的な網かけとか、扉画像を100%指定しても余白が出るとか、パッケージ文書でのカバー画像や目次ファイルの指定が無視されるとか、大小の問題はそっくり次号機まで持ち越されてしまいました。

 こういう新しい分野に切り込んだツールで、二の矢が一の矢に何も加えないというのは、ちょっと信じられないことです。もちろん、ハード的にはPRS-T2はより軽くなり、動作もよりスムーズでページ送りの暗転も最小限に押さえられ、確実に進歩しています。それだけにソフト的な停滞が実に残念というほかありません。今後ファームアップでの大幅なリファインを期待したいところです。楽天koboにも少なからぬ難点がありますし、ハードソフトともに満足できるEPUB日本語リーダーはまだ存在しません。こんなことをしているうちに、Kindle paperwhite日本版がそつなく登場して、動き始めた自主出版さえもAmazon mobiの市場に吸収されて、みんなAmazonの掌の上で踊るだけということになってしまうかもしれません。

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