「茅野蕭々詩集」を出版
春以来だらだらと作り続けてきた標記の電子書籍を、昨日ようやく出すことができました。
今回は有料出版とし、それもKindle出版でもiBooks出版でもなく、Gumroadという決済サイトを利用した自前出版としました。そのうちアマゾンさんに頼ることになるかもしれませんが、こうした明治・大正のほとんど忘れられた詩人の詩集というような超ニッチな本の場合、マーケティング云々は無視して、そっとそこに置いておいて、探してたどりついた人が時たまポツリポツリと買っていくという在り方が、好ましいのではないかとも思っています。それが売れないとたちまち店頭から消えしまう、ということのない、電子書籍の長所でもあります。
ただ、こういう詩人に興味を持つ人が、電子書籍を読める環境にある確率は、現在のところ極めて低く、もしそういう人がいたとしても、怪しげな個人サイトからよく分らない支払いサイトを使って買うというのもハードルが高いに違いありませんから、果して一冊でも売れるのかどうかと(一冊は自分で試し買いしてみましたが)、危ぶんでいるのが正直なところです。
といっても、本自体は力を入れて作ったものですし、何よりも自分自身がこの詩人への関心に動かされて詩を集め、感想めいたものを綴りもしたものですから、それなりに満足感を感じています。もし東京へ行くことがあれば、雑司ケ谷の塋域を訪ねて、墓前に一冊、とはいかないので、ソニーReaderのページページを泉下の詩人に捧げても恥ずかしくはないものに、一応はなっていると思っています。詩人は眼を白黒させて、現れては消えるはかない蜃気楼のようになってしまった自分の詩の有り様を嘆くかもしれませんが…。
さて、思えば盲蛇に怖じずで、電書工房などと称しながら、低スキルにも程がある素人工作の試行錯誤を一年半ほどに渡って書き残してきたこのサイトですが、一応はおもだった本作りの技術的課題にめどがつきましたし(その程度でか、と言われれば一言もありませんが)、出版物やウェブに確かな技術情報が揃ってきた今となっては、生かじりの発信はもはや有害とも思われますので、以後は電子書籍の技術問題よりも、個人出版をとりまくあれこれ、また本作りの過程で出会ったコンテンツ的な疑問点などについて、時折発信していければと思っています。
とりあえず、次の出版目標は成島柳北のオリジナルなコラム集。これは素材が膨大なため、気の長い作業になりそうです。また、江戸の地元詩人を追慕する本なども楽しみつつ作ってみたいと考えています。