Kobo eReader使用記
にわかに注目を集めた楽天のKobo買収は、内向きで日和見体質の日本の電子書籍界にようやく現われた、自立的な戦略と大きな野望を感じさせる動きでしたね。Koboという会社は2009年にカナダの大手書店を親会社として設立された若い会社らしいのですが、わずか2年ほどの間に、3種類の電子ペーパー端末と1種類の液晶端末を発売し、欧米やアジアに端末と書籍の販売網を展開してきた急成長株だったようです。ただまあ、決算を見ると2年連続の赤字ですから、盛大な種蒔きについに息切れがして、より強力なスポンサーが必要になったということかもしれません。この後、蒔いた種に見合った収穫は得られるのか、さらにはアマゾンの塁を摩する世界的EC企業にまで成長できるのかは、三木谷さんの手腕次第ということでしょうね。
さてそんな折、タイミングよくというべきか、悪くというべきか(来年前半にも日本語仕様のKobo eReaderが発売されるのは確実でしょうから)、Kobo eReader Touch Editionを入手してしまいました。たまたま娘が晩香坡へ遊びに行くというので、買ってきてもらった次第ですが、市内では本屋はもちろん、スーパーや電気店やドラッグチェーンにまで置かれていたそうで、値段も130ドル前後とリーズナブルで、カナダでは読書端末がたいへん身近な存在になっていることがうかがえます。ご覧のようにアクセサリー類もなかなか豊富なようで、高くてイマイチな純正カバーしか選択肢がないソニーReaderにひきかえ、羨ましい限りです。
で、入手したKobo eReaderですが、全般的な機能については注目記事欄からリンクしたeBook USERのレビューに詳しいのでそちらをご覧いただくとして、しばらく遊んでみての感想をいくつか。
●デザイン 外観・質感ともにいい感じです。サイズは、モニターサイズが同じ6型のソニーReaderにくらべて、縦が少し短く、横が少し長い、いいバランス。Readerより若干重く厚いかもしれませんが、問題にならない差。オールプラスティックですが、キルト風の凹凸が施された少し中高にふくらんだ背中は手に好感触ですし、白モデルはここの色にバリエーションをつけています。四隅にアールをつけた箱体やロゴ、画面のレイアウトとアイコン類など、全体にポップで親しみやすい雰囲気があって、生真面目で武骨さが残るReaderよりも読書端末にはふさわしいデザインだと思います。
●操作 ハードボタンはホームボタンが一つだけで、後はソフトボタンでの操作になりますが、慣れればさほど問題なし。動作はReaderにくらべると全体に遅めですが、まあ、本を読む分には実用範囲でしょう。WiFiでネットアクセスもできますが、技適マークがないので日本では御法度。Readerのブラウザーも敢えて常用するようなものではありませんが、Koboのものは輪をかけてそうだろうことは十分に想像できます。また書籍ファイルのダウンロードもブラウザーからはできないようです。
●日本語表示 eBook USERのレビューにもある通り、日本語epubがたやすく、しかも好きなフォントで表示できます。これがこの端末の一番の魅力で、だからこそカナダ土産にリクエストした次第です。
日本語フォントの導入はKoboをパソコンとUSBでつないで、ルートフォルダにfontsフォルダを作って、ttfファイルやotfファイルをコピー。日本語epubファイルは同じくルートフォルダにコピーするか、マイクロSDカードで読ませます。日本語epubを表示するともちろんそのままでは文字化けしていますが、フォント選択メニューから導入したフォントを選べば、見事に日本語で読めるようになります。
幾つかのフォントを試してみましたが、メイリオ・HG明朝・DF平成明朝・MS明朝・IPA明朝は問題なく表示、ただ小塚明朝だけは表示できませんでした。いやーしかし、読書端末で自由にフォントが選べるというのは、ひそかに望んではいたのですが、夢のようですね。しかも、文字サイズ・行間・マージン・ジャスティフィケーションを調整することもできます。フォントに関してはほぼ完璧。もし、これでepub3の縦書き・ルビ打ちに対応したら、一躍、日本語読書端末の最右翼に躍り出ます。
楽天さんには、既存の文書フォーマットの継承なんてことにこだわらずに、ぜひその方向でのKoboの改良をお願いしたいですね。もちろん、ソニーさんにも、epub3への対応とともに、Koboを見習ってReaderの文字表示のカスタマイズ性の貧弱さを何とかしてほしいもんだと思います。
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