kobo glo HD レビュー

glohd 久々に専用読書端末を買いました。7月23日に発売された楽天のkobo glo HDです。電子本の検証用端末が古いものばかりなので更新の必要を感じてのことですが、前投稿で触れた古いkobo touchに降ってきた新しいファームウェアが最新の端末ではどうなっているのかにも興味がありました。そこで、読書の視点と制作の視点の両方から、気づいた点をまとめてみます。

本読みの視点では…
 筐体のコンパクトさ・質感、スペック、コストパフォーマンス、どの点でも現在ベストなEPUBリーダーでしょう。バックライト付きの画面は常に明るく、表示は十分に精細で、これを使った後、以前の表示密度の粗い端末に戻ると、文字表示の不鮮明さにがっかりすることになります。紙の本で言えば、新刊書籍と数十年前の古本の印刷の差といったところでしょうか。もちろん、文字というのは少々不鮮明でも問題なく読め、場合によってはそれが味に感じられもするものですから、古本の価値が印刷品質によって損なわれることはないのですが、電書端末の場合は一世代前の表示環境に戻る意義を探すことは難しいでしょう。以後、読書はもちろん、制作したEPUB 本の文字校正にも主にこの端末を使うことになるのではないかと思います。ただ、kobo 端末には下に触れるkoboID がらみの難点があるので、本当はソニーReader のPRS-T4 がこのスペックで出ていてくれたらよかったのですが、もはや永遠にかなわない願いですね。

 ただし、使用上、退歩したと感じられる点も。ハード面ではSDカードスロットが無くなりました。ということは、自炊本や拙サイトのような自主流通本を読み込む時は、ケーブルで繋ぐのでなければ、クラウドストレージに頼ることになるのですが、DropboxやOnedriveにアクセスするブラウザーがもたつき気味で、しかも旧機ではログイン状態をある程度記憶していてくれたのが、glo HDでは毎回ログイン手続きを求められる始末。SDスロットを無くすのであれば、KinoppyアプリのようなDropbox連携とまでは行かなくても、もう少しスムーズにクラウドが利用できるようにしてほしかったと思います。まあ、自炊本や自主流通本などは知ったことではないと言われれば、それまでなのですが。

追記)2018年10月現在、上のDropboxを利用したEPUB本の読み込みはできなくなっています。おそらくDropboxの仕様変更のためでしょうが、kobo端末(glo HD以外も含め)からDropboxにアクセスしてファイルをタップしてもダウンロードが始まりません。従って、kobo端末に自主流通EPUB本を読み込ませる方法は、ケーブル接続かSDカードということになります。ただし、glo HDにはSDカードスロットがありませんので、ケーブル接続一択という寂しいことになってしまいました。今やクラウドの利用はあらゆるネット端末の必須機能ですから、一刻も早い回復を願いたいところです。※Dropboxにログイン後、デスクトップ版に移動することでダウンロードは可能です。詳しくは右の「EPUB本の読み方」へ。

本作りの視点では…
 前投稿で触れたように、海外版旧機に降ってきたファームウェア3.11.0ではリンクジャンプ後の「戻る」ボタンが存在しないという、拙サイトのように注記を多用するEPUB本には致命的な改悪が施されていました。しかし、本機のファーム3.16.10では「戻る」ボタンはめでたく復活していて、ホッと一安心。一方、前投稿でも触れた「koboIDなしで読書位置が残る」という改良は受け継がれています。特に「koboIDなしで…」の改良は、これまでせっせと手動でID振りをやっていた私のようなローテク制作者にはこの上ない朗報と言いたいところなのですが、子細に見ていくと実は同時にデメリットも生じていることが分かってきました。

 koboIDを振っていないEPUBファイルをglo HDで読むと、確かに一度本を閉じても(すなわち上の家マークをタップしてホーム画面に戻っても)、もう一度本を開くと前回読んでいたページに確実に復帰できます。しかし問題はその先で、読み続けようとページめくりをすると、復帰したページによってはページめくりが正しく行われないという現象が起こります。従来のkobo端末では、koboIDを振っていないEPUBを閉じると、常に読んでいるhtmlファイルの先頭を読書位置として記憶していましたが、実はこのglo HDでも一応前回のページに復帰はするものの、そこからページを繰ろうとすると、結局はhtmlファイルの先頭からしかページめくりができない、という奇妙なことになってしまっているようなのです。だから、たまたまファイルの先頭に復帰した場合を除いて、ページめくりは多くの場合正しく行われないということになります。これでは、改良と見えたページ復帰の機能が、かえって読者を混乱させます。

 つまり、glo HDは見せ掛けのページ復帰はするものの、実は従来通りkoboIDがないと正しくページ操作ができない、ハイライトやコメントも残せない。従ってglo HDにはこれまで通り、いや、これまで以上にkobo IDが不可欠というのが結論です。kobo端末がEPUB2書籍の大きなストックを持つカナダのKobo社主導で作られている限り、このkoboIDやkepub の呪縛は解消できないのかもしれません。

追記)kobo glo HD のファームウェアがさきごろ3.19.5613に更新され、アップデートを適用した端末では上記の見せかけのページ復帰の問題は解消されました。koboIDがない場合は従来通りhtmlファイルの先頭に復帰します。(2015.12.09)

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